モダニストの建築家ドナルド・ウェクスラーは、経済性や太陽、熱、風への耐久性の面から、砂漠にある建物には鋼鉄を使うのが理想的だと考えました。彼は1961年に、パームスプリングスの一画全体を占める約40軒の住宅全てを、プレハブ鋼とガラスを使って建てることを計画しました。ウェクスラーは、プレハブ教室の設計からこのアイデアを思いつき、スタイリッシュでありながらも手頃な値段(1962年当時の価格は13,000ドルから17,000ドル)の住宅を実現するために、その方法を活用したのです。
デザインのスキルでは先見の明があったウェクスラーも、将来における鋼鉄価格の急騰までは予測できませんでした。コストがかかり過ぎるということでこの開発事業は頓挫し、建てられた7軒のオリジナルの住宅は、以後すっかり忘れ去られました。デザインのファン達とって幸いなことに、プレハブのパイオニアとなったウェクスラーの建物は、1990年初頭に再発見されました。その大半は慎重に復元されたうえ、景観も当時に合わせたものとして完成されました。ラケットクラブ・エステート地区にあるこれらの私宅は、敬意をもって外側からだけ鑑賞してください(一般人を対象とする住宅内のツアーはありません)。